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PDT規則が撤廃されたら? ロビンフッドの株価85ドルの裏にある「計算」を読み解く

ロビンフッド(HOOD)の2026年の幕開けは110.3ドルだった。それが3月下旬には71.7ドルまで急降下し、現在は85.1ドルで落ち着いている。わずか2ヶ月で約35%もの価値を吹き飛ばし、そこから3分の1ほどを戻した格好だ。市場は一度「NO」を突きつけ、今はその判断を半分だけ撤回したといったところか。

HOODが再び110ドルの高値を取り戻すには、SEC(米証券取引委員会)による「パターン・デイトレーダー(PDT)規則」の撤廃が、単なる四半期限定の「ドーピング」ではなく、恒久的な売買高のドライバーとして機能する必要がある。リテール投資家の売買頻度が持続的に上昇し、それに伴う規制コストの急増なしにユーザーあたりの収益が伸びること。そして、市場が今はまだ「背景ノイズ」程度にしか見ていない「ゲーミフィケーション批判」が、今後も深刻な問題に発展しないことが絶対条件だ。

現状、そのどれもが確実とは言い難い。

カタリストの前にある「営業レバレッジ」の真実

まずは足元の事実から整理しよう。ロビンフッドが発表した2025年度の営業利益は20億9,400万ドルで、2024年度の10億5,600万ドルから大幅に伸長した。売上高も29億5,100万ドルから44億7,300万ドルへ伸び、営業利益率は35.8%から46.8%へと跳ね上がった。2025年第4四半期単独で見ても、前年同期の5億5,800万ドルに対し6億5,000万ドルを記録している。その「稼ぐ力」は数字が証明済みだ。

営業利益率が46.8%ということは、売上1ドルにつき約0.47ドルを営業利益として残せている計算になる。もしPDT規則の撤廃で売買頻度が高まり、売上が10%伸びたとして、固定費が変わらなければ、営業利益は10%以上増えるはずだ。スケーラブルなプラットフォームにおいて、増分収益はそのまま高い効率で利益へと転換される。

もし売上が20%伸び、かつ人員増を最小限に抑えられれば、営業利益率は50%を超えてくるだろう。しかし、逆に規制コンプライアンス費用が嵩めば、この増分マージンは一瞬で霧散する。売上45億ドルに対してコスト比率が5%ポイント上昇するだけで、営業利益は2億2,500万ドルも押し下げられる。これだけで利益率は41%付近まで後退してしまう。

壊滅的ではないにせよ、2025年度に積み上げた利益の大部分を吐き出すことになる。

市場はレバレッジの恩恵を織り込んでいるが、規則変更に伴う「コストのリスク」を完全には評価できていない。今後2〜3四半期は、PDT規則撤廃による売買高の拡大が、プラットフォームの設計に対する新たな規制当局の監視を招かない限り、ロビンフッドの営業利益率は拡大よりも「圧縮」に向かう可能性が高い。

もし2026年第2、第3四半期を通じて利益率が46%以上を維持できれば、私のこの懸念は杞憂だったということになる。

では、85.1ドルという株価は何を織り込んでいるのか? 現在の売上ペースと利益率を考慮すると、この株価は「収益性のさらなる改善」を先取りしている。85ドルは1月の高値から23%低い水準であり、PDT規則撤廃への熱狂が部分的に剥落したことを示唆している。しかし、市場は「ゲーミフィケーションのリスク」を完全には織り込んでいない。市場が軽視しているのは、規制緩和と政治的リスクの相関関係だ。規制のブレーキを外したプラットフォームでリテール投資家が巨額の損失を出せば、世論の標的になるのは「規則の変更」ではなく、「プラットフォームそのもの」である。

1月22日から3月24日までの61日間で、HOODは38.6ドルの下落を経験した。

反論のシナリオも単純だ。もしPDT規則撤廃が売買高を15〜20%純増させれば、ロビンフッドの2026年度売上は50億ドルを突破し得る。現在のコスト構造のままなら、営業利益は25億ドルに迫るだろう。その数字なら、85ドルという株価は割安だ。ただし、これは規制環境がモデル計算のように「クリーン」である場合に限られる。

単年度で営業利益を倍増させるのは、些細な改善ではない。ロビンフッドは今や立派な高収益企業だ。今問われているのは、PDT規則の撤廃がその収益性をさらに押し上げるものなのか、それとも2年かけて積み上げてきた強固な構造を蝕むリスクの呼び水となるのか、という点だ。現在の85.1ドルという株価は、前者を期待して買われている。だが、その期待を裏付ける証拠は、まだどこにも存在しない。