THE NONEXPERT a view, not a verdict.

ONセミコンダクターの「営業利益率1.4%」が示唆する向こう12カ月のシナリオ

株価とファンダメンタルズが逆方向に動いているとき、市場には独特の不安感が漂う。それが激しい衝突であれば話題にもなるが、多くの投資家が意図的に目を逸らしているような「静かな違和感」となると話は別だ。今のONセミコンダクターは、まさにその場所に位置している。2026年3月中旬に58.55ドルだった株価は4月中旬には68.65ドルまで上昇したが、この値動きは企業価値の再評価というよりも、市場全体の潮流にただ押し上げられただけのようにも見える。

この記事で注目するのは、ただ一つ、「営業利益率」という変数だけだ。収益の回復やAIへの期待、アナリストのレーティングなどではない。2024年に17億7000万ドルあった営業利益が、2025年には8420万ドルまで激減した同社が、向こう12カ月でこの利益構造を立て直せるのか。そして、現在の株価は、その立て直しを織り込むに足る余地を十分に備えているのか、という点だ。

説明を要する利益率

まず数字から見ていこう。売上高59億9000万ドルに対して営業利益率約1.4%という数字は、需要が軟化した際に、コスト構造が経営陣やアナリストの想定通りに柔軟に変化しなかったことを示す構造的な警鐘だ。2024年の利益率は25.0%だった。このあまりに大きな乖離は、全く別の収益モデルに変わってしまったかのような印象を与える。それにもかかわらず、株価が破綻を懸念するような水準に沈んでいないのは、市場が「1.4%はすでに底を打った一時的な数字に過ぎず、ビジネスの本質的な力は維持されており、需要の戻りを待っているだけだ」と見ているからに他ならない。

その仮説は正しいかもしれない。設備投資(Capex)の対売上高比率は2024年の9.8%から2025年には5.7%へと低下した。一見すると経営陣が不況下で投資を控えているように見える。しかし、R&D(研究開発)費率が8.7%から9.7%へと上昇している事実に目を向ければ、別の姿が見えてくる。物理的な設備投資を抑える一方で、パワーマネジメントICにおける製品差別化の源泉となるエンジニアリングへの投資は守り抜いているのだ。これは正当化できる優先順位であり、営業利益の圧縮が構造的なコストモデルの崩壊ではなく、需要側の圧力によるものであることを示唆している。ただし、在庫調整が市場の予想以上に長引けば、この理屈を維持するのは難しくなるだろう。

産業機器や自動車分野といった、パワーマネジメントICが深く浸透している市場のサイクルは、現在セクター全体のセンチメントを牽引する「AIブーム」とは別物だ。こうした最終市場における在庫調整は、歴史的に見ても広域なサイクルより1〜3四半期遅れる傾向がある。もし2026年後半まで供給過剰が続けば、売上高が安定し始めても、価格競争が利益率の回復を押し下げるリスクがある。現在の株価68.65ドルは、そのリスクを十分に織り込んでいるようには見えない。

もっとも、織り込んでいないことが正解である可能性も否定はできないが。

R&D投資が守る「その先」の価値

ONセミコンダクターがAIインフラ向けのパワーマネジメント分野、特に高電流密度と熱効率の交差点に位置する炭化ケイ素(SiC)やインテリジェント・パワーモジュールで強みを持っていることこそが、強気派の論拠である。これらは景気サイクルを問わず、製品レベルでの価格決定力が持続する分野だ。不況下でも売上高の9.7%という高いR&D比率を維持した決断は、在庫調整の向こう側でその価格決定力が再び威力を発揮するという賭けに等しい。もしこの賭けが的中すれば、すでに大幅に圧縮されたコスト構造が生む営業レバレッジが働き、利益率は予想を上回るスピードで改善する可能性がある。

産業および自動車向けチャネルの在庫が2026年中頃までに解消されると仮定すれば、向こう12カ月間は、売上増を主因とした再評価よりも、営業利益率が10〜15%のレンジへと回復することによる再評価が現実的だ。 もし在庫解消が2026年第3四半期を過ぎても停滞するようなら、現在の68.65ドルという評価を、いかなる将来利益予測に基づいても正当化するのは困難になるだろう。

アナリストたちの姿勢――2026年4月時点で「買い」または「強い買い」が20、「中立」が24、「売り」はゼロ――というコンセンサスは、この読みと一致している。アナリストたちは「底は見えたが、天井まではまだ語れない」と考えているのだ。「売り」評価が一つもないことは、今の1.4%という利益率が構造的な終着点ではなく、循環的な産物に過ぎないという確信の表れでもある。

一方で、逆のシナリオにも注意が必要だ。ONセミコンダクターの成長戦略の柱である自動車の電動化需要が、当初の計画に反して停滞し、欧米の産業界の設備投資が金利高の影響で慎重姿勢を崩さなければ、パワーマネジメントICの需要回復は予想よりも浅く、長引くことになる。利益率の回復が2026年後半までに12〜15%ではなく、せいぜい6〜8%にとどまるなら、現在の株価は妥当な水準に過ぎず、投資妙味は失われる。もし自動車や産業機器の在庫調整がコンセンサスの予想より2四半期以上長引けば、このストーリーは破綻する。低い稼働率が続けば、いずれ固定費の基盤そのものを侵食し始め、回復に備えた弾力性を失ってしまうからだ。

営業利益8420万ドルという数字に、今一度注目してほしい。低水準からの回復という算術こそが、この銘柄を非対称な投資機会にしている。歴史的に、ONセミコンダクターは稼働率が正常化し価格が安定すれば、20%を大きく超える営業利益率を達成できる能力を証明してきた。2024年の25.0%は一時的な異常値ではなく、需給が健全にバランスした結果だった。もし営業利益が2024年水準の半分、つまり同様の売上ベースで8億8500万ドル程度まで回復すれば、利益率の状況は「苦境」から「回復」へと一変し、株価のフォワード倍率は急速に圧縮されるだろう。利益が8400万ドルの段階で10%の利益増は誤差に過ぎないが、4億〜5億ドルのベースに乗れば、その伸びは市場の評価を根底から変えていく。フル回復を待たずとも、算術的な魅力は先行して現れるはずだ。

売上高59億9000万ドルで営業利益8420万ドル。パワーマネジメント分野の循環的な回復はすでに株価に織り込まれているが、歴史的な高水準に向けた構造的な利益率の拡大はまだ織り込まれていない。在庫サイクルが市場の想定通りに動くのか。次の2回の決算報告は、半導体セクター全体の株価上昇トレンドが示唆するもの以上に重要な答えを教えてくれるはずだ。