平均目標値まで49.2%の乖離
最低目標値 $190.00
$475.00
Yahoo Financeによれば、セールスフォース(CRM)の株価は現在180.18ドル。過去52週のレンジは163.50ドルから296.10ドルで、高値からは約39%の下落となっている。これまで何度もこうした売り局面を見てきたが、底値圏で語られるストーリーほど「説得力がある」ように聞こえるものはない。巷では「企業のIT予算は引き締められ、金利環境は過酷で、CRMの成長期は終わった」といった論調が支配的だ。だが、今の価格でそれを鵜呑みにする気にはなれない。
数字を見てみよう。2026年1月31日締めの会計年度では、売上高415.3億ドル、営業利益83.3億ドル、営業利益率20.1%、営業キャッシュフロー149.9億ドル、そしてフリーキャッシュフローは144億ドル(営業CF 149.9億ドル – 設備投資 0.59億ドル、同社開示資料より)を記録している。これらは「経営危機」にある企業の数字ではない。市場のムードが変わったというだけで、不当に再評価(リプライス)されているに過ぎない。
まず注目すべきはバリュエーションの乖離だ。Yahoo Financeによると、アナリストのコンセンサス目標株価は268.87ドル。現在の180.18ドルに対して、最低値でも190ドル、最高値は475ドルだ。アナリストの予想が常に正しいとは限らないが、これほどの乖離は「アナリストが夢を見ている」か「市場が売られすぎている」かのどちらかだ。私は後者だと考えており、その根拠はキャッシュフローの強さにある。
今後の展望として、セールスフォースの「Agentforce」プログラム(Xのunusual_whalesによると、特定のワークロードの30〜50%を自動化可能とされるAI)がマージンの押し上げ要因として機能するだろう。人手によるオーバーヘッドを削減しつつ、リソースを再配分することで、20.1%の営業利益率を維持しながらサービスを拡大できる。この自動化がさらなる営業レバレッジを生むなら、上昇余地はさらに広がるはずだ。
マクロ環境については両面的な見方がある。米財務省のデータによれば、2年物国債利回りは3.79%まで上昇し、連邦準備制度理事会(FRB)の政策金利3.64%を上回っている。市場はこの状況を「高金利の長期化」と受け止めており、CRMのような長期デュレーション資産には逆風だ。それは認める。しかし、これに対する反論もある。企業はコスト削減圧力にさらされても、CRMのサブスクリプションを解約したりはしない。むしろ、人件費を削減できる自動化ツールへと傾倒するのだ。この力学はAgentforceの採用を後押しする。予算引き締めは効率化ソフトにとって、単なる逆風ではなく、むしろ追い風になり得るのだ。
もう一つ、注目すべき契約がある。Xのunusual_whalesによれば、政府サービス向けに結ばれた56.4億ドル、9年間にわたる大型契約がセールスフォースのComputable Insights部門にある。これによって、純粋なSaaS企業には珍しい、長期的な収益の可視性が確保された。CFOが四半期決算で頭を悩ませたからといって、9年契約が霧散することはない。このような期間の長さは、収益という橋の片側を岩盤に固定するようなものだ。これだけで無敵になるわけではないが、下振れリスクに対する考え方は変わらざるを得ない。
市場が過小評価しているもう一つの変数は、非テック企業におけるエンタープライズ層の採用スピードだ。銀行、製造業、医療システムといった組織は動きが遅い。彼らのCRMや自動化予算は、まだこれから本格的に配分される段階にある。Agentforceの第1波はIT業界による自社製品の利用だった。第2波である伝統産業の大規模なエージェント・ワークフロー統合は、ほとんどの市場予想に織り込まれていない。これは、コンセンサスの数字には現れない「潜在的な需要の拡大」だ。
もしCRMの営業利益がトラリング(直近12ヶ月)ベースで75億ドルを下回り、売上高成長率が5%未満に失速するようなら、私の強気ケースは崩壊する。その時は、マージンのストーリーがトップラインの減少とともに悪化していることを意味し、バリュエーションに関する議論など意味をなさなくなるからだ。
株価は296ドル付近でピークを打ったが、今は180ドルだ。キャッシュフローを生み出すエンジンは変わっていない。契約構造も変わっていない。変わったのは、市場のムードだけだ。
時として、最も割安な株というのは「ビジネスが機能しなくなった」銘柄ではなく、「ストーリーが退屈になった」銘柄のことなのだ。
