平均目標は11.7%下回る
$2,000
現在のKLAコーポレーション(KLAC)に対する市場のコンセンサスを要約すると、こんなところだろう。インテルの第1四半期決算が好調だったことで、半導体製造装置業界全体に青信号が灯った。AI主導の設備投資は構造的に高水準で、KLACが叩き出す38.2%という営業利益率(2025年度売上高121.6億ドルに対し営業利益は約46.4億ドル)こそが、同社のビジネスがいかに揺るぎないものであるかの証明だ、と。Yahoo Financeのデータによれば、株価は2026年4月24日に1,935.00ドルを付け、52週高値の1,939.36ドルまであと一歩に迫った。モメンタム重視のトレーダーたちは、この天井を「警告」ではなく「さらなる上昇への踏み台」と見なしているようだ。
だが、世間の楽観論が静かに見過ごしていることがある。KLACの現在の株価は、アナリストの平均目標株価1,709.28ドルを大幅に上回っているのだ。Yahoo Financeのコンセンサスデータによれば、強気派の最高目標値ですら2,000.00ドルである。つまり、この銘柄は「完璧な強気シナリオ」を、実際に受注残に数字として現れる前にほぼ織り込んでしまっている。アナリストたちが同社のビジネスの質を高く評価しているのは間違いない。しかし、私が懸念するのは「ビジネスの質」と「株価(価格)」は別の議論であるはずなのに、市場がそれを同じ文脈で語りすぎている点だ。
私が繰り返し注目しているデータがある。FRED(セントルイス連銀)によると、2026年第1四半期の半導体稼働率は69.7%まで低下しており、2025年第1四半期の76.1%から悪化している。稼働率は工場(ファブ)にとっての「温度計」だ。ここまで数字が下がれば、半導体メーカーは冷え込みを感じ始め、真っ先に削減するのは新規設備への投資である。KLAの検査・計測ツール(ウェハーが不良品になる前に欠陥を見つけるための必需品)は、最先端ノードにおいては不可欠なため、ある程度の不況耐性はある。しかし、レガシーノード側では稼働率の低下がよりダイレクトに響く。こうした静かな浸食は、決算ガイダンスでヘッドラインとして登場するまで表には現れないものだ。AIへの設備投資ストーリーと、現場の稼働率低下という現実との間には確かな「乖離」があり、現在の株価はその乖離が拡大する可能性を少しも考慮していないように見える。
さらに、マクロ環境も逆風となっている。米財務省のデータによれば、2026年4月時点の2年物国債利回りは3.79%まで上昇し、連邦準備制度理事会(FRB)の政策金利3.64%を上回っている。歴史的に見れば、この逆転現象は市場が長期的なキャッシュフローに対する割引率を再評価し始める兆候であることが多い。今の株価バリュエーションを考えれば、こうしたマクロ要因を軽視することは危険だ。エネルギーコストの上昇も、半導体メーカーの工場運営コストを押し上げ、不要不急の設備更新を先送りさせる要因になる。これ一つで全てが台無しになるわけではないが、52週高値圏にある株が飲み込むには、少し重すぎる向かい風だろう。
2025年度のフリーキャッシュフローは37.5億ドルだった。これは営業キャッシュフロー40.8億ドルから設備投資額3億3,526万ドルを差し引いたもので、この規模の企業としては驚異的な水準である。KLACのビジネスの質を過小評価するつもりは毛頭ない。営業利益率38%超、そしてこのレベルのキャッシュフロー創出能力は偶然ではなく、KLAが代替の利かないプロセス制御のニッチ市場で築き上げた強固なポジションの賜物だ。強気派の論拠はこうした確固たる基盤の上にあり、それは幻想ではない。私が自分に問いかけているのは、これほど優れた企業であっても、これほど高い価格で、かつマクロ環境が冷え込んでいるこのタイミングで、本当に今「買い」なのかという点だ。特に、経営陣が強調する堅調な受注残や短期的安定感は、稼働率低下による設備投資への悪影響が遅れて現れるリスクをまだ織り込んでいない可能性がある。
今後2四半期で半導体稼働率が75%以上に回復し、2年物国債利回りが政策金利を大きく下回るようであれば、私の「マルチプル(倍率)圧縮」への懸念は的外れであり、この株価は正当化されるだろう。それが、私が今後の展開を測るための判断材料だ。
振り返ってみると、この株の動きにはある種の「エレガンス」すら感じられる。チャートを見ると、今年1月から3月下旬までの3ヶ月間、1,300ドルから1,570ドルというレンジで停滞していた株価が、インテルの決算発表をきっかけに、わずか2週間で52週高値まで垂直に近い上昇を遂げた。ビジネスの内容そのものがその2週間で変わったわけではない。変わったのは「物語(ナラティブ)」だけだ。私の経験則から言えば、ファンダメンタルズが追いついていないのに物語だけが先走る時、許容される誤差の範囲は極めて狭くなる。
KLACという企業の質は疑っていない。疑問なのは、現在の株価が、今後12ヶ月間に起こりうる多様なシナリオを正当に反映しているのかという点だ。
